こよみと暮らす 第十九回『冬至』

こよみと暮らす
こよみと暮らす 第十九回 冬至
秋口から紅葉を始めていた木々は、すっかり葉を落とし、今は太い幹や枝が冬の低い陽を浴びて黒々とした姿をあらわしています。

そんななか、常緑樹である椿の木はつやつやとした肉厚の葉を茂らせ、少し前から膨らんでいた蕾が、このごろ少しずつ花開くようになりました。
こよみと暮らす 第十九回 冬至
『のりこぼし』奈良県奈良市 東大寺開山堂Photo 井上博道
奈良には古くから「大和三名椿」と呼ばれる、椿の名所があります。そのひとつが、東大寺開山堂に植えられた椿。一般に非公開の場所ではありますが、塀越しにその一部を覗き見ることができます。

鮮やかな赤に、白の斑点が特徴的なこの椿には、「糊こぼし」という別名があります。東大寺では毎年「お水取り」という行事のために、紙で椿を模した飾りをつくる風習があり、そのときに使う赤い紙に白い糊をこぼした様子に似ていることから、この名前が付けられたそうです。

花の少ない冬場には、街中でも椿や山茶花の可憐な姿がひときわ目を引きます。
さて、今年も残すところあと10日ほどになりました。クリスマスのイルミネーションに街が華やぐ一方で、年内に済ませたいスケジュールがあれこれ気になる季節です。

そんな気持ちを追い立てるように、日に日に早くなる日暮れ。まもなく、一年で最も日照時間の短い日「冬至」を迎えます。別名「一陽来復」とも呼ばれるこの節目。ここを越えれば、春に向けて少しずつ明るい日差しが戻ってくる。柚子湯に浸かり一息つきながら、年内もう一踏ん張りです。

12月は師走とも呼ばれていますが、もともとは物事を成し終える「為果つ(しはつ)月」が語源であるという説もあります。

考えてみれば掃除も仕事も買い物も、どうしても年内に済ませなければいけないわけではないのだけれど、やっぱり何かをやり終えた達成感とともに、新しい年を迎えるほうが気持ちいい。

そんな前向きな気持ちで今年も年末を忙しく過ごす人に、お正月の準備をちょっと楽しくするヒントをお届けします。
この秋冬から仲間入りした、幡の新しいテーブルウェア「刺し子渦」のシリーズ。手描きのやわらかな点線を麻生地にプリントして、ランチョンマットやコースターに仕上げました。

モチーフになっているのは、素朴な刺し子の風合いです。カラーは生成地に赤と、赤地に生成の2色があり、互いに重ねたり色違いで組み合わせたりしてもうまく調和します。
お正月に使いたい漆椀など和の食器はもちろん、グラスや洋食器などの組み合わせにもなじみやすいので、お正月に気分を変えて洋食を楽しむときにも華を添えられます。

コースターや房付きの角マットは食卓以外でも、お茶の時間や、花や小物を飾る際の敷物としても活躍します。
腕をふるってつくった御節料理を引き立てる場合はもちろんですが、たとえ年内に大掃除が終わらなかったとしても、ひとまずテーブルを片付けて敷物を整えれば、清々しい気持ちで新しい年を迎えられるはず。

忙しい年の瀬かと思いますが、まずはみなさまが楽しく、新しい年を迎えられることを願っております。2022年もよい年でありますように。

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