こよみと暮らす 第二十三回『啓蟄』

こよみと暮らす
こよみと暮らす 第二十三回 啓蟄
3月に入ると少しずつ、暖かな日差しが届くようになり、ここから三寒四温を繰り返しながらいよいよ待ちに待った春がやってきます。

そんなよろこびを家のなかにも感じたいという気持ちなのでしょうか、花屋の店先はこのごろ、いつにも増してにぎわって見えます。

行事の多い3月は花屋さんの繁忙期。ブーケに使われる切り花にはトレンドがあるようですが、昔から変わらず店先に並んでいるのが、桃の花。その枝ぶりを見ると、ひな人形を飾ってもらった子どものころを思い出します。
こよみと暮らす 第二十三回 啓蟄
『桃源郷』 奈良県五條市西吉野町鹿場Photo 井上博道
桃の花は、梅や桜に比べて、開花のニュースを聞き逃してしまいがちですが、この時期、奈良県吉野の里では、薄紅の桃と、杏、黄色いサンシュユが競うように花を開き、その様子はまさに桃源郷。

春の季語に「山笑う」という言葉がありますが、こうして色とりどりの花に満たされた景色をみれば、その意味を実感できます。

ちなみにこの例えは、緑が生い茂る夏は「山滴る」、紅葉が美しい秋は「山粧う」、そして生き物が活動を休む冬は「山眠る」と続きます。

冬のあいだ土の中に眠っていた虫たちも、そろそろ目を覚まし、活動を始めるころ。二十四節気では「啓蟄」を迎えます。「暦便覧」を紐解くと、「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出ればなり」と記されています。

冬の間に縮こまっていたのは、虫たちだけではありません。私たちも大きく伸びをして、新しい一歩を踏み出してみたい季節です。

幡のかや製品も、春に向けて、カラーパレットに新しい色を加えました。
そのうちのひとつが鉄紺。昨シーズンまでの藍と同系色ですが、青の深みが増してグッと引き締まった印象です。

もともと合わせる色を選ばないベーシックな色味ですが、春先に身に付けたいベージュやパステル系に合わせると、お互いによく引き立て合い、春らしいコーディネートをバランスよくまとめてくれます。

ロングフーディやショールなど、さっと羽織れるアイテムはこれからの季節の必需品。

また、ワンピースなど主役になるアイテムでも、シックな印象のなかに紺色ならではの明るさが気分を引き立てます。
もうひとつの新色は丁子。赤みがかったベージュのような色味です。

丁子というのは、香や香辛料などに使われる植物・クローブの和名です。以前紹介した香色と同様に、この丁子を煮出して染めた色をお手本にしています。

柿よりはやや抑えめですが、ほのかに彩りを感じられ、日常に取り入れやすい色味です。

キッチン周りの袋物にも、この新しい2色を楽しめるアイテムが充実しています。もう少し暖かくなってきたら、お弁当を持って外に出かけてみるのも良さそう。
通気や吸水にすぐれた幡のかや製品は、春から夏にかけて、特にその良さを感じていただけます。

まずは手にとって、何度か洗濯を繰り返しながら、その肌なじみを感じてみてください。風薫る季節のころには、愛着のあるアイテムに育っているはずです。

はやいもので、昨年の春分のころ大きな桜の木の写真とともにスタートしたこのコラムも季節がひと巡り。

幡ではこれからも、製品づくりやお店でのおもてなしを通して、季節を感じながら暮らす日々のよろこびを、みなさまに届けていきたいと考えています。

今回ご紹介した商品はこちら…


鉄紺 商品一覧 丁子 商品一覧
※順次追加予定
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