連載コラム 『こよみと暮らす』| BAN INOUE ONLINE SHOP

こよみと暮らす

こよみと暮らす 第十七回『小雪』

山の紅葉は頂から徐々に麓に下りてくる。街路樹が赤や黄色に変われば、山は雪をかぶりはじめます。時折、襟元を抑えたくなるような冷たい風が吹くようになったこのごろ。二十四節気では「小雪」です。視点を少し遠くへ渡せば、季節の移り変わりを感じられます。イチョウ並木の下には少しずつ黄色の絨毯ができ始めています。風が吹けば、カサカサと乾いた音を立てて落ち葉が舞う。緑だった葉は、黄色に赤に。深く濃い赤に染まった葉は、...
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こよみと暮らす 第十六回『立冬』

気温がグッと冷え込んで、秋が深まってきました。もう少し厚手の上着を選べばよかった、と思う日もありますが、晴れた空はどこまでも高く秋らしい陽気です。桜並木はすっかり葉が落ち、いち早く冬支度。一方、イチョウの葉はしっかり育って、これから迎える紅葉の季節を待っている。足元の銀杏を踏みつけないように気をつけながら、散歩を楽しみます。最近は、都市部のスーパーなどでも新米入荷の幟を目にするようになりました。...
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こよみと暮らす 第十五回『霜降』

たわわに実った柿の実。季節は実りの秋を迎えました。市街地でも、庭先に柿の木があるお宅を見かけることはありますが、こんなに大きく勢いのある枝ぶりはなかなか珍しい。写真は、奈良市の白毫寺町。以前「秋分」の回で、萩の花が咲くお寺を紹介したあたりです。年季の入った土塀と、秋の澄んだ空、その間で柿の鮮やかな色味が映えています。柿は、古くから俳句などにも読まれてきた日本古来のフルーツ。奈良も柿の産地として有名ですが ...
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こよみと暮らす 第十四回『寒露』

このごろは日が沈むのも早くなり、17時台でもかなり薄暗くなりました。西の空を見れば、オレンジ、ピンク、紫がかった色など、その日の天気によってきれいな色を見せてくれます。市街地に多くの池がある奈良では、夕日に染まる水面が美しい景色をつくります。今回紹介する写真が捉えているのは、奈良市西ノ京にある大池(勝間田池)の風景。池越しに薬師寺の東塔・西塔・金堂を望める場所です。黄昏時、人も建物も植物も影に沈んでいくなか夕焼けの色がひときわ映えています。 ...
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こよみと暮らす 第十三回『秋分』

春のお彼岸のころにはじまったこのコラムも、ちょうど半年が過ぎて「秋分」を迎えようとしています。この日を境に、昼よりも夜が長い季節がはじまります。9月のことを長月と呼ぶのは「夜長月」からきているそう。十五夜の満月、今年はきれいに見えるでしょうか。暑さ寒さも彼岸まで。秋の長雨を境に、空気が涼しく感じられる日が増えてきました。雨上がりに空を見上げれば、うろこ雲。サルスベリの花も季節の変わり目を伝えてくれます。 ...
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こよみと暮らす 第十二回『白露』

雑木林のうえに、ぽっかりと浮かぶ月。最近は少し日暮れも早くなりました。俳句の世界で、「月」といえば秋の季語です。月が詠まれた和歌は、百人一首のなかにもたくさんあります。「天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも」遣唐使として長く赴任していた阿倍仲麻呂が、遠く離れた唐の国から見える月に、故郷である奈良で見た月を重ねて詠んだ歌。この三笠の山というのは、春日大社の後方に見える御蓋山のことだそうです。 ...
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こよみと暮らす 第十一回『処暑』

奈良には、古くから変わらない風景が多く残されています。県の中部にある明日香村は、今から1400年ほど前、飛鳥時代の史跡が残る地域で、壁画で知られる高松塚古墳など、教科書に出てくる古墳や寺院を訪ねることもできます。景観を守るための取り組みが長年続けられたことによって、万葉集に詠まれた景色を今でも体感できる場所です。八釣の里と呼ばれる集落もそのひとつ。この時期、高台から見下ろせば、青々とした稲穂や里山の民家が見える。 ...
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こよみと暮らす 第十回『立秋』

早起きは三文の徳。暑い季節は特にそうかもしれません。まだ涼しく静かな朝方のうちに、体を動かしたり、仕事をはじめたりしておけば暑さの厳しい昼下がりには、ちょうどひと休みできる。子どものころはよく、夏休みの宿題は午前中に、と言われたものです。夏の朝の特別な時間。蓮の花は夜明けとともに開きます。一枚一枚、ゆっくりと花びらが開いていき、中から黄色いオシベと花托が見えてくる。午後には花を閉じてしまうため、寝坊していてはお目にかかれません。 ...
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こよみと暮らす 第九回『大暑』

水面から浮かび上がるような、白い花。梅にも似たその姿から、梅花藻という名前を持つ植物です。ゆらゆらと水の間をたゆたう様子、想像しただけでもちょっと涼やかな気持ちになる。水温が一定な冷たい清流でしか育たないので、温暖な地域ではなかなかお目にかかれない。滋賀県醒井の地蔵川には500mにわたって、この梅花藻が生育していて、夏場、その姿を見に訪れる人も多いそう。 ...
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こよみと暮らす 第八回『小暑』

ついこのあいだまで市街地の公園や庭先で、大きな玉のように花を開いていた紫陽花は、そろそろ夏の花に主役を譲ろうとしています。時間をかけて少しずつ枯れていく姿も美しいものですが、少し涼しい山あいの地域に入ると、まだ自生の紫陽花の生き生きした様子を楽しむことができるところも。今回紹介した写真は、奈良県宇陀市で撮影されたもの。木々のしっとりとした空気のなかに咲いているのはコアジサイという品種で、花の部分は5cmほど。 ...
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こよみと暮らす 第七回『夏至』

いらかの波と雲の波。という歌いだしではじまる、鯉のぼりの歌を思い出すような風景です。奈良市の中心部からほど近い歌姫町。写真は、旧街道沿いの古民家の屋根を捉えています。もともと平城山丘陵と呼ばれるこの付近一帯では、瓦に必要な粘土や燃料が豊富で、瓦窯跡がいくつも残っています。初夏の日差しに照らされて、よく乾いた瓦。ちょっとお布団でも干したくなるような屋根です。こんなふうにカラッとした天気の日が、この季節は特に貴重に思えてきます。 ...
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こよみと暮らす 第六回『芒種』

岩の間を勢いよく流れる川の水、その中ほどに見えるのは、五つの花弁が星のように見えるヒメレンゲの可憐な花。カメラがシャッターを切るわずかな間に、あっという間に目の前を通り過ぎていく水の姿と、じっと止まっている植物。その動と静の対比を切り取った一枚です。しっとりと濡れている苔は、それこそずっと同じ場所で、風や川の流れを見送り続けてきたのかもしれません。さて、季節は6月です。今年の奈良は例年より早く梅雨入りしました。 ...
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こよみと暮らす 第五回『小満』

ちょうど5月の連休のころでしょうか。さらさらと風に流れる藤の花、かなり高いところをそよいでいるように見えます。撮影されたのは、奈良公園。東大寺や興福寺など歴史の教科書でも馴染み深いお寺があり、鹿たちがのんびり過ごしている。修学旅行を思い出す人もいるかもしれません。その一角にある春日大社は、藤の名所でもあります。藤棚から地面に届くほど房の長い「砂ずりの藤」をはじめ、20品種もの藤が栽培されています。 ...
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こよみと暮らす 第四回『立夏』

少し前まで、柔らかく淡い色味をしていた木々の葉も、しっかりと緑が濃くなり、厚みも増して。道を歩けばサワサワと街路樹の葉が揺れる音がする。仕事中、草刈機の音が気になり締めていた窓を開けると、風と一緒に刈ったばかりの草の匂いが届きました。夏は来ぬ、立夏です。奈良県南部、吉野の山々も、冬はしんと眠ったような雰囲気だったのに、今ごろは彩りを取り戻し、新緑がモクモクと立ち上がってくるかのよう。 ...
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こよみと暮らす 第三回『穀雨』

春先に花をつける白山吹の花。ヤマブキと言うと、色の名前としても知られる黄色い花が思い浮かびますが、この「白山吹」と「山吹」は花弁の数なども異なる、別属の植物なのだそう。年度も明けて一段落した今日このごろ、新生活の疲れが出ていませんか。ちょっと一息、お茶を入れて、休憩にしましょうか。週末の天気がすぐれないときは、「まあ、無理せず家で休め」というメッセージなのかもしれません。 …
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こよみと暮らす 第二回『清明』

するすると滑らかな水の流れが、草を湿らせて下っていく。やがて吉野川に注ぐこの水流は、「象(さき)の小川」と呼ばれ、万葉の歌人も歌に詠んだとか。さて、季節は春。二十四節気では清明です。その意味を紐解いてみると、「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれるなり」とあります。つまりは、自然界のものたちが春先の清らかな空気のなかで、生き生きと活動してはじめる季節。たしかに、野の花や草もピンとみずみずしくなって、タンポポ、菜の花、目に飛び込んでくる色の種類も豊富になってきました。...
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こよみと暮らす 第一回『春分』

奈良県・宇陀市。大きな山を背景に、大きく枝垂れて咲く桜。鮮やかな桃の並木のなか一本でひときわ存在感を示すこの桜は、樹齢約300年。この地にゆかりの戦国武将から「又兵衛桜」と名付けられています。そんな歴史背景を知るとなおさら、石垣の舞台から乗り出すように咲くその姿に、なんだか芝居のクライマックシーンのような迫力を感じます。そんな春の一場面。撮影したのは、井上企画・幡の創業者である、写真家の井上博道(はくどう)です。 ...
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