こよみと暮らす 第一回『春分』

こよみと暮らす 第一回 春分
奈良県・宇陀市。大きな山を背景に、大きく枝垂れて咲く桜。

鮮やかな桃の並木のなか一本でひときわ存在感を示すこの桜は、樹齢約300年。この地にゆかりの戦国武将から「又兵衛桜」と名付けられています。
『又兵衛桜』 奈良県宇陀市大宇陀本郷Photo 井上博道
そんな歴史背景を知るとなおさら、石垣の舞台から乗り出すように咲くその姿に、なんだか芝居のクライマックシーンのような迫力を感じます。

そんな春の一場面。撮影したのは、井上企画・幡の創業者である、写真家の井上博道(はくどう)です。

空や山、水、草木や生き物など、わたしたちの身近にある日本の自然に目を向け続けた彼の作品を見ていると、季節ごとに変化を味わえるこの風土を愛おしく感じます。

季節や自然からインスピレーションをもらいながら、暮らしのなかに楽しみを見つけていく。幡というブランドはもともと、そんな思いから生まれました。

忙しく暮らしていると、日々刻々と変わっていく、季節の豊かさを見落としてしまうこともある。

そこで、日本の気候に合わせてつくられた「二十四節気」を手掛かりに、今日の暮らしを少し楽しくするヒントを一緒に考えてみたいと思います。


第一回目は「春分」です。この日を境に昼が長くなっていく、祝日としても馴染みある響きです。
ダウンコートが手放せないうちから「こよみの上では春ですが」と言い続け、やっと身も心も春を実感できる今日このごろ。

2021年は例年より桜の開花も早いそう。寒々しい枝から蕾が膨らんで、みんなが今か今かと待ちわびる桜。入学や卒業の思い出が遠くなっても、桜が咲くと何かほっとする節目のように感じます。

ポカポカ陽気の日が増えてきても、まだ温かい飲み物がホッとする。とはいえ、せっかく春が来たなら、まったりと甘いものより少しあっさり爽やかな口当たりのものが飲みたい。

香りを楽しむストレートの紅茶は、年中いつ飲んでもおいしいものですが、そこをグッと春の気分に寄せていくために、迎えるテーブルにひと工夫。さらさらとした手触りの手織り麻のコースターを合わせてみます。

季節を問わずに使えるアイテムですが、グラスや竹かごなど爽やかな雰囲気のうつわと相性がよいのも麻の特性です。

幡が創業当初から提案してきたシンプルな正方形のコースター、色は全部で14種類あります。

1枚あれば用途は足りますが、二枚をずらして重ねたりランチョンマットと組み合わせたり、色の響きあいで華やいで見えることも。

生成りをベースに色を重ねているので、自然と日本の伝統色のような色味に。重ねると着物の合わせのような雰囲気が楽しめます。

自分の好きな色に手を伸ばしてみるのもいいし、食材に合わせてみてもいい。

サイダーのように透明な炭酸を注いだグラスなら「もえぎ」や「水色」はどうだろう。押さえた色調の「けし炭」には緑が鮮やかな草餅を合わせてみたい。

淡い色、鮮やかな色、まずは小さなコースターからパレットのように色を集めるのも楽しそう。
もともとはギフトセットして長く親しまれてきた麻のテーブルウェア。いつもの食卓でお客さまをもてなすときにも活躍します。

一方で今は、おうち時間が長くなっているからこそ、何気ない自分の1日を豊かにするために使ってもらえたらと思います。

家族がそれぞれ自分のお茶碗を持つように、自分の色のランチョンマットを持つという習慣。その光景がいつかその家だけの大事な思い出になるような気がします。

あるいは今、ワンルームのテレワークで、仕事も食事も同じ机でする生活が続いているなら、一枚の布が気持ちを切り替えるきっかけにもなるはずです。
上下左右まっすぐに動く糸の運びも目で見える麻。一度机の上をゼロにして、ピシッと四角い生地を机の縁と平行に置いてみる。

菜の花や筍、貝など、いつもと違う食材もいいけれど、まずはいつもの飲み物を、新しい気持ちで味わってみる。それだけでも、ちゃんと家に春が来るような気がします。


<麻のテーブルウェア:お手入れのこと>

苧麻の糸のおおらかな風合いを活かした手織りの生地でつくったテーブルウェア。食事中の小さな汚れは目立たたないというのは、日常の相棒らしい頼もしさ。洗濯機に入れるよりは、汚れたところだけつまみ洗いするのがおすすめです。

全部を丸洗いするときは手洗いで半乾きの状態で巾だしをしてアイロンをかけると、麻らしいピシッとまっすぐな風合いが長持ちします。

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