こよみと暮らす 第二回『清明』

こよみと暮らす 第二回 清明
するすると滑らかな水の流れが、草を湿らせて下っていく。

やがて吉野川に注ぐこの水流は、「象(さき)の小川」と呼ばれ、万葉の歌人も歌に詠んだとか。
『象の小川』奈良県吉野郡吉野町喜佐谷
『象(きさ)の小川』 奈良県吉野郡吉野町喜佐谷Photo 井上博道
さて、季節は春。二十四節気では清明です。

ひとつ前の春分に比べると、あまり馴染みがないというか、「よし、今日から清明か!」と意識することは少ないかもしれません。

その意味を紐解いてみると、「万物発して清浄明潔なれば、此芽は何の草としれるなり」とあります。つまりは、自然界のものたちが春先の清らかな空気のなかで、生き生きと活動してはじめる季節。

たしかに、野の花や草もピンとみずみずしくなって、タンポポ、菜の花、目に飛び込んでくる色の種類も豊富になってきました。日が高くなるにつれ、その色味も明るく見えてきます。

昼間は上着なしでも過ごせるこの頃、まちゆく人の服装も風景に色を添えてくれる。

幡の製品のなかで、ひときわカラーバリエーションが沢山あるのが「かやショール」。目を引くような鮮やかな色から、ベーシックな色まで、いろいろです。
かや、という生地。幡ではおなじみの素材ではありますが、ここであらためて、その特性をご紹介します。
漢字で書くと「蚊帳」。もともとは蚊避けのために使われていた素材で、「風は通すが、蚊は通さない」が、蚊帳の特徴。実際に肌に触れてみると、その意味がよくわかります。
細い糸と糸の間に隙間ができるように織られた生地で、織るときに糸が切れてしまわないよう、パリッと糊を効かせるのですが、生地に仕立てた後で水を通すと糊が落ち、ふんわり柔らかい風合いに変わります。
ふきんや洋服に仕立てるときは何枚か重ねて縫い上げるのですが、ショールは薄い一枚の生地でできていて、とても軽い。手に取りやすい価格なのは、余計な加工をしていないからなのです。
通気性や吸水性が高いので、散歩や自転車でちょっと汗をかいても大丈夫。糸がふっくら波打つことで、肌には少しシャリ感のある触り心地が生まれます。フサの部分が肌に触れてもチクチクしないので、白いシャツの内側からチラリと色をのぞかせる使い方もおすすめです。
小さくまとめて持ち運べるので、朝晩少しひんやりする日にも便利。かばんに入れるときは、糸をひっかけないように大きめのハンカチなどで包んでおくと安心です。

先日、外出先でスマホを探そうと、おもむろにかばんに手を突っ込んだとき、かやショールを入れておいた小さな巾着に手が触れて、「なんだ、この柔らかいものは!」とびっくり。袋に包むとふわふわするので、一瞬ぬいぐるみか何かかと錯覚してしまいました。

出がけに急いでいて、ショールを丸めて巾着に突っ込んだのだ…。と、余裕のなさを反省しつつ、取り出してパタパタと広げると、もとどおり。

しわが立体的な風合いとして生きてくるので、忙しい日常でも、気軽に付き合えるアイテムです。

クシュっと縮むとコンパクトに見えますが広げてみると約50cmと、意外と幅広。肩から羽織ることもできるので、オフィスのロッカーに入れおくと冷房が効きはじめる季節にも活躍します。

さて、何色にしようか。さわやかな風を受けて歩くところを想像しながら、色選びを楽しんでみてください。

<使い始めるときは>
蚊帳生地ははじめ糊が効いてパリッとした風合いです。一度、ぬるま湯で押し洗いをするように水を通すと、ふんわりとした手触りに変わります。その後はネットに入れて洗濯機で洗ってください。

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