こよみと暮らす 第十四回『寒露』

こよみと暮らす
こよみと暮らす 第十四回 寒露
このごろは日が沈むのも早くなり、17時台でもかなり薄暗くなりました。西の空を見れば、オレンジ、ピンク、紫がかった色など、その日の天気によってきれいな色を見せてくれます。

市街地に多くの池がある奈良では、夕日に染まる水面が美しい景色をつくります。今回紹介する写真が捉えているのは、奈良市西ノ京にある大池(勝間田池)の風景。池越しに薬師寺の東塔・西塔・金堂を望める場所です。黄昏時、人も建物も植物も影に沈んでいくなか夕焼けの色がひときわ映えています。
こよみと暮らす 第十四回 寒露
『西ノ京 大池』奈良県奈良市西ノ京 大池(勝間田池)Photo 井上博道
秋の空は高いという言い回しがありますが、日中はカラッと澄んだ空気が心地よい。朝晩は少し風が冷たく感じることも増えてきました。秋もいよいよ本番、季節は寒露です。

日本の暦には、二十四節気をさらに細分化した七十二候というものがあります。寒露の時期は「鴻雁来(こうがんきたる)」「菊花開(きくのはなひらく)」「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」の3つが対応しています。

暦がつくられた当時と、現代では暮らしの風景も変わっていますが、紐解いてみると、空に、足元に、さまざまなところへ私たちの視線を誘いながら季節を感じるヒントをくれます。

名前から自然を味わう手がかりを得られるものは、暦だけではありません。日本の伝統的な色の名前はほとんどが自然由来のもので、あらためてその色彩の豊かさを感じさせてくれるもの。幡の製品では、カラーバリエーションにこの和の色名を使っています。

今回から2回にわたってその一部をご紹介します。秋らしい色を選んで紹介しますので、ぜひ、秋の衣替えの参考にしてみてください。
まずは、「つるばみ」。つるばみというと、聞きなれない響きですが、秋にたくさん実をつけるどんぐりのことです。どんぐりの実は、細かく砕いて煮出すと染料になり、薄茶の色が出ます。そこに金属質の媒染剤を掛け合わせることで、赤みや青みなどのバリエーションを増やすことができます。

幡で扱う「つるばみ」色は、鉄媒染した色をモデルにつくったもの。実際は化学染料で染色していますが、やや青みがかったグレーという色の具合は、自然由来の雰囲気を再現できるよう調整したものです。

ベーシックな色味なので、洋服としてもいろんなアイテムと合わせやすい色です。
続いては、「くれない」です。これも、紅花という染料に由来する名前です。紅花自体は、夏場に黄色い花をつける植物ですが、その花弁を摘んで発酵させることで赤い色に変化していきます。

目にも鮮やかな色。かつては高貴な身分の人にしか許されない着物の色だったそう。幡では、夏のワンピースなどにも「くれない」の色展開がありますが、これからの季節にオススメなのは、モンペパンツ。足元からちょっと赤い色がのぞくと、差し色になって、重ね着が楽しくなりますよ。
幡のかや製品、現在カラーは全部で19色。ベーシックなものから、ビビッドなものまでさまざまですが、不思議とどの組み合わせでも、色のひびきあいが調和します。洋服のコーディネートではよく「色は3色まで」なんて言われますが、日本の伝統色に倣った幡のパレットには、それ以上の可能性がありそうです。

まだまだ奥深い色の世界、次回に続きます。

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